5月24日(金)~6月22日(土)までhpgrp GALLERY TOKYOにて個展「Piled up message」を好評開催の八木秀人さんへ作品制作の過程から今後の展望まで様々なお話を伺いしました。 -八木さんは、広告代理店でキャリアを重ねていく中でアートディレクター、グラフィックデザイナーとして仕事の領域を広げて来られました。 仕事としてのデザインワークと今回の展示のような個人のアートワークの違いはありますか? ありますね。 デザインワークはクライアントとのコミュニケーションで製作共同作業。アートワークはオリジナルワークとして自分自身で考えて作っていく。そのスタンスがまず違う。デザインワークはクライアントの望んでいるものを形にしているものだから、クライアントが作りたいものをサポートしている感じ。仕事として自分が作る立場としてクライアントに喜んでもらえたら、もちろん嬉しい。広告は自分が手がけた1枚の絵が全てではなく、商品のPRという複合した中での一部分だけど、アートワークは自分が作り上げたものだけで完結する。そこが全然違う。 作品の受注制作もしてみたい。ベースは自分の作る世界感で、ある程度任されている領域の中で作っていくのは早くやってみたくて楽しみです。 -作品の言葉はどこから抽出して、どうデザインになっていくのか、制作過程を教えてください。 文字は毎日の出来事から。人が言っていること、自分が気になったこと、感動したことが頭に残っていて、これは形にしよう!とメモをしておく感じですね。-メモするときは既にデザインが浮かんでいるのですか? 全然浮かんでいないです。この言葉、メッセージにしよう!と決めておいて、いくつか出来たものを全部英語に置き換えてみて英語の文章にていく。 そこから英語のタイポグラフィーを見て、このタイポグラフィーだとこういう表現や形がいいかなとか、文字量が多いと複雑にしてみたり、計算しながら試行錯誤していっています。-では、選んだ文字によって、ひとつひとつの形自体や重なりなどを考え出していくという感じなのですね。 今回新たに制作した中で特に制作の過程の中で印象に残っている作品はありますか? (作品「High Quality. / Hide」を指して)これですかね。漢字を使った作品は今回初めてで、どういう形になるか予測がつかなくて。実際やってみると、やっぱり独特の日本っぽさや文字自体に和の雰囲気が出てくるので、やっていておもしろさはありました。ただ、英語だけの時と違い、日本語と英語が共存するので、その世界を作るのは制作していく中で複雑性が増して表現の難しさは感じました。ミックスした面白さはあるので、ここからどう展開していくか模索中です。-例えば、この作品「The whole creation / Shirabansho」なども英語と日本語のフォントが違うかと思うのですが、どういう風に形を決めていますか? 書体は読めることを優先しようと思って、英語の書体は敢えて文字として読めるものを選びましたね。「森羅万象」は明朝体のイメージがあったので、そこは崩さず組み合わせました。 元々は読みづらくても読める人にだけ伝われば良いという考えで制作していたのですが、海外で出展すると読めないのがストレスなことが多いようです。NYだと、読むことによって自己啓発や会社のメッセージになるだとか、どちらかというとそういった視点で手元に置かれたいと思う方が多かったです。そういう方がユニーク。アート作品なんだけど、会社の理念としてのメッセージ性もある、ある意味広告的なニュアンスに近いかも。 作品も色々な方の意見を取り入れて制作しているので、大きくいうとご覧いただいているお客様をある意味クライアントとして捉えられますね。-技法を元にお客様とコミュニケーションを取っていて、それをまた制作に反映されている感じですね。 ギミック的な見え方をするものはどこまで意識して制作されていますか?実はこう見える作品などあれば。 (作品「HUMAN」を指して)これですかね。 これは実はすべて人なんです。腕を組んでいたり、親子だったり…これは手で描いた書体です。-今後の展開としてはどのようにしていきたいですか? 展示に関しては、来年の3月のNYでの展示はブースを拡大して展開しようと思っています。 今までにない大作も含めたくさん持っていって壁を席巻しようと計画しています。その為に色々と動いているところです。 そして、今回挑戦した一番小さいサイズの作品は完成度が下がってしまうかと思ったのですが、薄いパネルを発見して、薄いものにし軽量化もでき再現性は意外と高められたと思います。 小さくても展開できるというのが今回の発見です。手に取っていただきやすいサイズになっているかと思います。 制作の今後の展開としては、グラフィックの中にキャラクターというかアイコンを作って入れることに挑戦してみたいと考えています。キャラクターとメッセージを掛け合わせることでもっと展開が広がっていくのではないかなと。 後は、プリントした写真の上から手でペイントするものもやっていきたいですね。 八木秀人 -Profile- 埼玉県所沢市生まれ。 マッキャンエリクソンに入社し広告代理店でのキャリアをスタート。電通入社後、アートディレクター、グラフィックデザイナーとして仕事の領域を広げ、2018年にHand Inc. を設立。 日々の仕事の一方で、自分らしいアートワークを模索している。生活の中で得る思想や感情から文字を選び、レーザーカッターなどは使わずに紙とスチレンボードをカッターで裁断、積層することで、文字が層となり地形図のような立体が浮かび上がる。 本展では今年3月にニューヨークで開催された個展に出品された作品群に加え、新作を発表。高い技巧と独自の構成による新たな表現に挑む。 [開催中の展示詳細] ■hpgrp GALLERY TOKYO 八木秀人 個展「Piled up messages」 2019年5月24日(金) ~ 2019年6月22日(土) 12:00~20:00(日・月定休) 展示中の作品はサイトでもご覧いただけます。