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クリエイターが教えてくれたこと

Vol.4 WOUTERS&HENDRIX

 

―H.P.FRANCE PR 江間 亮子(えま りょうこ)



クリエイターが表現するものは、完成品から得られる表層的なものに留まらない。一個人としての思想や哲学、おかれた時代の呼吸、その全てを内包すると思っています。そんなクリエイターの「人」としての一面を感じてもらいたく、彼らとの想い出と共に、私的に綴ります。
 


H.P.FRANCE PR 江間 亮子(えま りょうこ)

90年代の「フレンチスタイル」ムーブメントの洗礼を受け、一歩でもフランスの文化に近づきたく、96年にアッシュ・ペー・フランスの門戸を叩く。以降ファッションの持つ魔力に囚われて、「伝える人=PR」であるべく奮闘中。
 


「繊細でエキセントリック」


これが私のファーストインプレッション。WOUTERS & HENDRIX (ウッターズ・アンド・ヘンドリックス) のコレクションは、過去と未来が ‘ぐにゃり’ とねじれた時間軸の中で創造されたような、ミステリアスな空気を纏っていました。具象的なモチーフをコラージュするように作品に仕上げる。紛れもなくアクセサリーであり、ごくごく小さなオブジェのようでもある彼女たちの作品。少し難解なファンタジーを読み進むかのように、夢中になっていきました。
 
パール×チェーンブレスレット ¥49,000 / パール×爪リング¥40,000 2020年春夏コレクションより
1985年、カトリン・ウッターズとカレン・ヘンドリックスという二人の女性により、WOUTERS & HENDRIXの飽くなき探求の旅は始まりました。二人の出会いは幼少期の頃まで遡ります。しかしお互いの存在を認識しないまま、同じ小学校を卒業。その後、名門アントワープ王立アカデミーの彫金科で再会を果し、運命の歯車が回りはじめました。そこでは「アントワープ・シックス」の誕生を目前にした若き才能たちが鬩ぎあい、夢を語る、濃密な学生生活が待っていました。ここで培われた偏愛的な感性と技術は、二人の才能のシェアにより、無限の可能性を引き出すこととなります。彼女たちは自らを「反逆者」と評します。伝統的なジュエリーの既成概念を超える創造性に拘り、自由な発想で素材に向き合う。その具象的で、彫像的なモノ創りの背景には、シュールレアリズムへの愛が潜んでいる、と。

WOUTERS & HENDRIXの留まることのない進化。常に未来へと向かう視線は、新しい驚きと発見を示し続けています。
 

 
「美しさ」とは見る人の目の中に宿る・・・
運命の出会いを遂げた二人
二人の心はジュエリーへの情熱で繋がれた
ゴールは限界の先にある
卓越したクラフトマンシップ
未知なる世界を感じる感性
ひねりの効いたウィット
そしてユーモア
シリアスにならないよう
これらをバランスよく調合すること
 
30th写真集より抜粋
 


WOUTERS & HENDRIXの挑戦と革新の日々は35年の歳月を越えました。別の個性を持つ二人の女性が、WOUTERS & HENDRIXという一つの意思ある架空の存在を創り上げ、その個性を、その表情を育て続けているということ。そう考えると、35年の月日は長く、大きな葛藤と、喜びの共有を反復した日々だったと想像します。そして私たちは、その壮大なストーリーに感服し心が大きく揺さ振られているのだと。



この節目に、二人にとって、そしてWOUTERS & HENDRIXにとっても新たなステージ、そして未来への布石となりうるミッションが飛び込みました。彼女たちが拠点とするベルギー・アントワープは古来よりダイヤモンド取引の中心地でした。そこに創設されたダイヤモンドに捧げる博物館「DIVA」に招致され、ゲストキュレーターとして「ROOM OF WONDERⅡ」の企画展を手掛けることとなりました。折りしも35年の節目を目前に控えた時、彼女たちは大きな挑戦に挑むこととなったのです。
 



このエキシビションのコンセプトは「cabinet de cur iosité (キャビネ・ドゥ・キュリオジテ=好奇心の小部屋) 」。
まさに二人の創作の原点と言える「好奇心」。その思考を共有し、体感できるようなエクスポジションを見事にオーガナイズしました。2019年9月、DIVAで行われたオープン記念式典には、アントワープ市長、学生時代を共にした朋友、ドリス・ヴァン・ノッテンをはじめとする「アントワープ・シックス」の面々が顔を連ね、彼女たちの偉業を称えました。



今回の展示では、二人の敬愛するアーティストやジュエラーの作品、自身のコレクションのアーカイブ、蚤の市や旅先で見つけたお気に入り…など、直感的かつ本能的に召集した作品やオブジェが、独自の観点からキュレーションされています。そしてそれらが共鳴しあい、対話し、時にコントラストをもたらすよう、全ての作品の間に生まれるダイアローグを創り上げてきました。



このセッションを実現するまでの行程は特異で、あたかも作品一つ一つが意志を持ち、互いに対話する相手を見つけていくようなものでした。その極めて精神的で緻密な作業は、膨大な時間とエネルギーを費やすものだったことでしょう。そして二人は言いました。「私たちのアーカイブ展ではありません、それぞれの作品同士の対話の中に、WOUTERS & HENDRIXの視線を重ねて感じて欲しい」と。
 
©weareoskar.com for Recto Verso Magazine
彼女たちがここまで創作活動、表現に情熱を傾ける理由は何か?私は35年の軌跡に答えを見た気がしました。それは、二人の変わりない信念「明日へ向かって進み続けること、今この瞬間が歴史となる」を体現するものである、と。
彼女たちは歩み続けます。決して過去に捕らわれることなく、常に今、この時の潮流を読み解きながら。今この瞬間が歴史となるのだから。

 

WOUTERS & HENDRIX INFORMATION - "ROOM OF WONDER" is coming to rooms 40 ‐

 
Scenography concept: Bob Verheist
Curation: Romy Cox and Katrin Wouters & Karen Hendrix

ベルギー・アントワープにあるDIVAダイヤモンド博物館にてデザイナー二人がキュレーションした企画展「Room of WonderⅡ」が、2020年2月20日 (木) 〜22日 (土) 開催予定のrooms 40のために再編成され登場します。WOUTERS & HENDRIXの35年の軌跡と共に、今と未来を見つめる彼女たちの視線を共有できる貴重な展示。デザイナー2人が来日し創り上げる、魅惑の世界「Cabinet de curiosité (好奇心の小部屋) 」を体感下さい。

 
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