DESIGNER Carolina Bucci(キャロリーナ・ブッチ)
フィレンツェの歴史を繋ぐパーソナルジュエリー
“ものづくり”の価値とは何でしょうか。とりわけ自分以外の誰かのために作る場合、
この問いかけがとても大切であり、一言で伝えられるほど単純なものでもありません。
私がジュエリーデザイナーとして最も重要だと考える要素は、自分の想いや経験を、現実世界で日々身につけるアイテムに落とし込むこと。単なる装飾品としてのジュエリーではなく、外面的な“美しさ”と、内面に込められた“意味”という両方の価値を兼ね備える必要があります。1885年よりフィレンツェで代々ジュエリーを作り続けてきた家族の歴史、幼少の頃フォルテ・デイ・マルミのビーチでブレスレットを作って過ごした夏の思い出、穏やかで美しいフィレンツェと慌しいニューヨークを行き来する生活、さらに今は母として、妻としての人生について。これらの全てが、私がデザインするジュエリー、時計、ショップなどあらゆるものに凝縮されています。
ブランドが人々に共感してもらうためには、真実味を持たせる必要があると考えます。一番簡単な方法は、自分自身のためにデザインすること。私は、誰かの好みを想像することは決して無く、ただ自分が身につけたいものを作ります。それが、結果的に他の人々にも気に入ってもらえたら嬉しい。そして、そういったデザインはいたってシンプルで、予測不可能なものです。私は今、このコラムをニューヨークにある自宅のデスクで書いています。デスクの上は、スターリング・ルビーのスプレーペイント、ヴェルドゥーラのブローチ、イタリア様式の庭園、アメリカ先住民のヘッドドレス、カルロ・モリーノの写真、ギャラリー「Axel Vervoordt」に展示された侘寂など、様々なイメージやアイデアのカケラで溢れかえっています。ここに座る時はいつでも、色々な感情や経験の中から何か新しいイメージの組み合わせを見出すことができ、また新たなコレクションへと繋がっていきます。しかし、その過程には何の計画も戦略もなく、ただ自分の感性に従っているだけ。私は自分の心と目でデザインし、常に周囲に目を向けています。
私達は、最近ロンドンに新しいショップをオープンしました。ブランドの世界観を見て感じることができるよう一生懸命デザインした店内には、3つの空間が用意されています。1960年代のイタリア家具とアート、オーダーメイドストーンのフロア、そして上質な家具でしつらえた空間。しかし、より重要なことは、ブランドの背景をこのショップで体感できること。ここで、私達が最も大切にしている4つの要素をお伝えします。