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D-due

デザイナー×スタッフ対談

- 時を経ても、愛される服 -


スペイン/ガリシア地方を拠点に、老舗ドレスメーカーをベースとした洋服を展開する「D-due(デ・ドゥエ)」。2023年4月にコロナ以降二度目の来日を果たしたデザイナーの一人、ロサリオ・フロハン(通称:チャロ)は、彼女自身のファッションやライフスタイルもまた、D-dueファンから熱い支持を得ています。今回はそんなチャロの創作活動について、D-dueディレクター・今井と、チャロと同世代スタッフ・森田が話を聞きました。
 


 

服作りの先には、常にD-dueのファンがいる

森田 D-dueは毎シーズン、全く異なるコンセプトから新しいコレクションを発表し続けていますが、その発想の根元はどこにあるのでしょうか?

チャロ 年を重ねた分の経験や、あるいは、日々イマジネーションを鍛えることから始まります。暮らしの中で、常にアルフレッド(※D-dueのもう一人のデザイナー)とコレクションについて話し合っているので、冗談を交えた楽しいコミュニケーションをきっかけに、自然と少しずつアイディアが生まれていきます。机に向き合い、「さあ、やろう」と思って出て来るものではないですね。
 チャロ(右)とアルフレド(左)の日常風景。仕事もプライベートも、互いが一番の理解者であり、良きパートナー。

今井 何気ない日常の会話がベースだからか、毎シーズン必ず、今の気分に合ったものや、潜在的に自分が求めていたアイテムがあるんです。まるで二人に脳みその中を読まれているようで、興味深い。
来日イベントなどでお客様と触れ合う時間も、何かの形でコレクションに反映されるのでしょうか?

チャロ もちろん!服作りをする時、私たちは常にお客様のことを考えています。スペインと日本のお客様には共通点があり、それは一度D-dueの服を買ってくださった方が、繰り返しファンになってくれるところ。そのため、まずはお客様に次シーズンも楽しんでもらえるようなアイテムをイメージします。
逆に、皆さんがD-dueの服を選ぶ時、どんな側面に注目しているのかも気になりますね。アイテム同士の組み合わせなのか、はたまた刺繍や素材などのディテールなのか。

森田 私の場合は何より、「自分に似合うか、自分が好きか」がポイントです。ただ面白いのは、最初に自分が選ばなかったアイテムでも、後日試着するとまた新しい魅力に気づくことも多々あります。本当に、D-dueはその時々に新しい発見があるから、飽きません。

今井 お客様と話していると、宝探しのようにD-dueの服を選んで下さる方が多いのが印象的。D-dueの服は基本、何でも着る人にフィットしますが、その中でも試着をしながら、ステッチや裏地の加工といった細かいディテールなど、自分が気になるポイントを見つけていく楽しさがあります。
 来日中に、D-dueの取扱店舗を回ったチャロ。goldie H.P.FRANCE 新宿店にてディスプレイをチェック。 
チャロ そう言えばスペインのお客様で、いつ着るかは分からないけれど、クローゼットを開けたときに幸せになるから、という理由で選ばれる方もいました。

森田 その気持ち、すごくわかります(笑)。

今井 一度生地やシルエットを気に入ると、毎シーズン同じ型を何点もリピートされる方も多く、あるお客様は、毎年ネイビーのコートをご購入くださっています。一見同じデザインでも、本当に細かい部分に毎シーズン新しい工夫やこだわりが込められているから、私たちファンを魅了し続けているのでしょうね。

チャロ どの型に、どれ程のファンがついているか知ることはとても重要。そのデータが、次シーズンのコレクション制作にも活かされています。小規模なブランドだからこそ、お客様の声をすぐ服作りに反映させられることも、他のブランドには無い価値の一つだと思っています。
スペイン・ガリシアの工場にて、2023年秋冬コレクションの制作風景。職人たちの確かな縫製技術に裏打ちされた、品質の良さも魅力の一つ。
 

ファッションと、年齢との付き合い方

今井 D-dueは40・50代のお客様の支持が厚く、同世代の森田さんには一ファンの視点で、「D-due H.P.FRANCE」のインスタライブにレギュラー出演してもらっています。私自身が20代でアッシュ・ペー・フランスに入社した頃も、お客様の年齢や性別と乖離があったので、どんなデザインがあったら嬉しいかなど、先輩の森田さんに率直な意見を聞いていました。当時の私は裏原ファッションのようなテイストも好きでしたが、最終的に今はD-dueにどっぷり浸かっています。

チャロ 反抗的なファッションが、随分と落ち着きましたね(笑)。

今井 D-dueは、節々にロックな精神を感じるんですよ。大人になるにつれ、全身で尖ったスタイルを表現することが難しくなりますが、D-dueはそういうマインドを内に秘めたまま着られる服だと思っています。「大人に選ばれる服」として、チャロさんがどんな想いで服作りをされているのか気になります。

チャロ 年齢を重ねた人全員が、「大人」として一括りにできる訳ではないと思います。もちろん年齢は、常に現実として私たちに付きまとうものですが、ファッションにおいては、その人の「考え方」の方が大事ではないでしょうか。皆さんがD-dueの服を着た時に、他の大人向けに作られた服よりも、遊び心や若々しさを感じてもらえたら嬉しいです。

森田 正にその通りだと思います。私自身、ある年齢に差し掛かった時、それまで好きだった服が急に似合わないと感じることがありました。D-dueと出会った40代前半がまさにそんな頃で、他にはないデザイン性やシルエットへの驚きはもちろんのこと、ファッションにおいて人生の転換期を迎えた自分を、すごく素敵に魅せてくれたことに、高い満足度を得られました。今では毎シーズン、新しい驚きと感動を与えてくれるD-dueに、心を鷲掴みにされています。
2023年秋冬コレクションでは、ヴィンテージ風のネル素材やメタリックなビロード生地など、新しい生地も多様されている。
ドレスメーカーならではの、着たときの仕草やシルエットにまで気を配ったパターンメイキングが際立つ。
 

世代を超えて楽しめる魅力

チャロ 一般的に、D-dueの服はモダンな印象を受けると思いますが、それは家族全員が着こなせるからだとも言えます。お客様と接していると、娘さんやお孫さんと一緒に着られると言われることがよくあります。上質な生地や、経年変化に耐え得る縫製の品質にもこだわっているので、自分だけでなく家族への投資として、代々受け継がれる家財のような感覚で楽しめるところも、D-dueの良さだと思います。

森田 日本のファッション市場ではミセス層と若い世代でターゲットが分かれている服が多いので、「若作りしている」だったり「おばさん臭い」といった印象を与えがち。一方D-dueの服は、年齢、体型、性別を問わずフィットするし、私たちの世代はもちろん、20代・30代の方が着ても同じように素敵に魅せてくれる、その懐の深さが魅力だと思っています。

チャロ あるお客様は、全て異なるシーズンの服を6着ほど持っていて、一緒にコーディネートすると、最近のものと昔のアイテムの区別が全くつきません。「数年前に買った服を久しぶりに着てみたら、何かイメージが違った」という服にありがちな違和感が、D-dueには感じられないと思います。

今井 D-dueはどのシーズンのコレクションも、時代を感じさせないデザインばかり。昔購入したアイテムが数年後にまた活躍するなど、普遍的に楽しめます。服作りの根底にブランドの信念を貫いているからこそ、流行に左右されない作風にロックな精神を感じるのかも知れません。さらに、一つ一つのアイテムがとても魅力的なのに、着る人の組み合わせ方によって違った表情を見せるところが面白い。私は特にD-dueのコートが大好きなので、毎年寒くなると、何年も前に買ったお気に入りのコートを着るのがとても楽しみです。
 2023年4月、D-due H.P.FRANCE 日本橋店にて開催したチャロ来日パーティー。スタッフの個性が光るD-dueコーデにも注目。
 

これからの生き方について

森田 チャロさんと同じ年齢で、人生の折り返し地点に立った一人の女性として聞きたいのですが、今後のライフプランはありますか?

チャロ 私自身も考えているけれど、正直なところ、答えはまだ見つかっていません(笑)。常に、目の前にあるプロジェクトに向き合っているうちに、いつの間にか時が経っている感覚です。ただ、世の中には引退後に自分の趣味を始める人もいますが、私は幸運にもこの仕事が大好きなので、自分にとっては仕事が趣味の延長でもあります。仕事をしながら頭もフル回転させているし、沢山のエネルギーを得られている。さらに、様々な年代の人たちと関わりながら、社会が変化していく過程を知ることもできるので、今の生活はとても幸せです。
強いて言えば、毎回来日の度に時間が足りなくなってしまうので、次回こそ何処かに家を借りて長期間日本に滞在し、皆さんと一緒に暮らす感覚を味わってみたいですね。
  同い年同士のD-dueファン・森田(左)と、デザイナー・チャロ(右)。
 

間も無くスタートする2023年秋冬コレクションについて

チャロ 今回のコレクションでは、特別なシチュエーションというより、ガリシア地方で生活する私たちの日常を映し出しています。特に、自然との関わりは私たちにとって、切っても切り離せないものです。

今井 2023年秋冬は、「忘れられた家」がテーマになっています。ガリシアの観光的な要素ではなく、ある意味素朴で、チャロさんたちのリアルな暮らしが表現されていると思います。

チャロ 私たちが住む場所のリアルな側面をコレクションに反映したかったという気持ちと、それをお客様に知っていただくことで、皆さんにも私たちの暮らしの一部になって欲しいという願いが込められています。
 
文章:米田沙良(H.P.FRANCE THE MAGAZINE編集部)
 
 

D-due

2023 AUTUMN/WINTER COLLECTION

- Lost Houses –


D-dueの2023年秋冬コレクションは、近年テーマに掲げていたガリシア地方の海や、そこに住む生き物・人々ではなく、内陸部のより牧歌的な風景が広がる田舎をコンセプトに添えた。「Lost Houses(忘れじの家)」の名の通り、田舎に廃棄された家々は、かつてそこに生命を収容していた空間としての確固たる証である。中には、道具置き場として転用されたものや、家畜を保護する厩舎として機能するものもある。いずれも、そこで暮らしや人を表す、荒涼とした物語のようなものだ。廃墟と、人々の居住区が共存する姿は、ガリシアの魔法のような歴史の中で息づき、現地の田園風景をより特別なものとしている。

 

2023年6月16日(金)より展開スタート

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