アッシュペーセレクション
- 今も、未来も -
#2 SERGE THORAVAL 刻印ジュエリー
アッシュ・ぺー・フランスが数十年に渡り提案してきた、「永遠の定番アイテム」。それぞれのクリ エイターが持つ独自の美学やストーリーによって生み出された名作たちは、トレンドに関係なく、 持ち主のアイデンティティを際立たせます。この連載では、誰もが気になるアッシュペー の「あの名作」の魅力を紐解きます。
メタルに刻まれる、愛と魂のメッセージ
パリのジュエリーブランド、SERGE THORAVAL(セルジュ・トラヴァル)。デザイナーのセルジュは独学でジュエリーを作り始め、1992年、自身のコレクションをスタート。フランスの有名な小説『シラノ・ド・ベルジュラック』に登場する詩や、五感の文字をジュエリーに刻み、1点1点ハンドメイドの独特の雰囲気を持ち合わせた力強いデザインは、イタリア、ドイツをはじめ世界中で人気を博します。『シラノ・ド・ベルジュラック』の一説より抜粋
“Un baiser 接吻”リング ¥42,900
“Un baiser 接吻”リング ¥42,900
1999年1月、不慮の事故によりセルジュが急逝した後は、パートナーのジュヌヴィエーヴが彼の意志を継ぎました。トレンドに左右されることのない刻印ジュエリーは、今も世界中で変わらぬ支持を得ています。現在は二人の息子であるロック・トラヴァルが、セルジュの魂と今の時代感をミックスさせた新たな作品を発表しています。
01 感覚のまま打つメタルの質感
一見無骨に見える中にもエレガントさを有し、大胆さの中に繊細さを表現するSERGE THORAVALのジュエリー。そこには完璧な新品よりも、時を経て痛んだようなもののミステリアスな一面に惹かれていたというデザイナー・セルジュの美学が写し出されています。彼が創造し、愛でるものには「完璧ではない」部分が必要とされました。そんな彼のジュエリーに、きれいに整えられた直線や曲線は存在しません。
生前のセルジュをよく知る人々は、彼の生まれながらの才能にいつも驚かされていました。感覚のままメタルを打ち、ちょうど良い力具合で仕上げられていく、唯一無二のハンドメイドジュエリー。まるで、メタルがセルジュの意思に沿って、彼の思いのままに形作られていくようでした。
02 言葉の代わりに刻まれた想い
口下手だったセルジュは自分の感情や気持ちを、言葉で伝える代わりにジュエリーに刻んでいきました。「昨日は電話をくれてありがとう」と刻印したメタル片を、友人に贈ることもありました。 彼が初めて作った指輪は、二つの輪がいびつにくっついているようなデザインのもので、内側には「Je t’aime(愛してる)」と刻まれていました。うまく回らないけれど、とても固く溶接された指輪が、まるで相手との関係性を表しているかのように。