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マリアナ・コルテス来日レポート


2018年11月、アルゼンチン発ライフスタイルブランド Juana de Arcoのデザイナーであるマリアナ・コルテスが2年半ぶりに来日し、各地でイベントを開催しました。合わせて、ブランド設立20周年を記念したコレクションのアーカイブ展が、約3ヶ月に渡り新宿・表参道・京都を巡回しました。
今回の来日では、初の試みとしてマリアナによるトークショーを実施。Juana de Arcoのウェアでコーディネートされた沢山のお客様と、20周年を記念したアーカイブコレクションに囲まれた店内で、マリアナが20周年への思いやブランド設立の背景について語りました。
Q: 2年半ぶりの日本はどうですか?

マリアナ・コルテス: すごく嬉しいわ。日本に着いてから毎日天気に恵まれていて、運が良かったの。それからこんなに温かい空間を作ってくれたスタッフの皆さんと、わざわざ足を運んでいただいたお客様に心からありがとうと伝えたいわ。

Q:20周年という節目に開催したアーカイブ展に対する想いとは?

マリアナ・コルテス: この企画は昨年発足し、既に約80点の衣装が、ブエノスアイレスのサンテルモ地区にある、国立衣装歴史博物館に寄贈されているの。Juana de Arcoのピースが世界中に渡るようにという思いを込めて、20年分の全コレクションから各年のヘッドピースや一番印象的に残っているピースを中心に厳選し、初開催国として日本を選んだの。展示のテーマ「Magical Bridge(魔法の架け橋)」は、アルゼンチンと日本をつなぐ架け橋のイメージ。
 
Q :アーカイブ展のメインビジュアルに使用されている、グリーンの洋服にはどんなエピソードが?

マリアナ・コルテス:これは「Juana Esquia(ホォアナ・エスキーア)」というテーマで作った2008年秋冬コレクションのもの。雪山から、大きくなりながら転がる雪玉と、Juana de Arcoを重ねて表現しているの。私はコレクション毎にイメージとなる土地を決めていて、この時はアルゼンチンのウシュアイアを舞台として選んだわ。ウシュアイアはアルゼンチンの最南端にあり、別名“世界の終わり”とも呼ばれているのよ。
このワンピースは、雪が積もったもみの木をイメージして、柔らかく軽い毛糸のポンポンでできた雪が、編み地になった松の木に積っていく様子を表現したの。ファッションショーも思い出深く、モデルの中にはバレリーナも入れて、ランウェイを歩く途中にわざと転んでもらって、スキーヤーをイメージした演出をしたのよ。

Q:Juana de Arcoが最初に発表したコレクションは水着だったとか。設立当時のエピソードを教えてください。

マリアナ・コルテス:もともとデザインを勉強していたけれど、デザインはできても洋服の作り方が分からないことに気付き、工場で働く職人向けの学校に通うことにしたの。ちょうど10月で、アルゼンチンは春が始まる時期だったので、水着を作るコースを見つけて入学したわ。その後、下着の制作を始め、そこで下着を縫ってくれる職人と出会い一緒に仕事をするように。当時のアルゼンチンでは下着というと、コットン100%で、色はベージュ、白、黒、と本当につまらないデザインしかなかった。“VISTE TU INTERIOR(内面から輝こう)”というJuana de Arcoのスローガンにもあるように、下着は周りからは見えないものだけど、自分だけの楽しみでカラフルなデザインを身につけても良いのではという思いを込めて、ビキニをイメージした明るい色を使った下着を作り始めたの。

 
Q:パレルモに一号店をオープン後、周囲にはカフェやショップがオープンし、ブエノスアイレスのおしゃれタウンになり、街の人々から“パレルモのハート”と呼ばれているマリアナ。パレルモを選んだ理由とは?

マリアナ・コルテス:当時のパレルモは、お店といったら八百屋があるだけの簡素なエリアだった。だけど、とても日当たりが良く、自分の故郷であるアリベーニョスの町に近いものを感じたの。しかも、ブエノスアイレの中心に位置する好立地。今お店がある場所は、前の住人が引っ越して空き屋になった時から目に留まるようになり、毎日その前を自転車で通って散歩コースにしていたわ。その建物自体が、私の祖父が営むパン屋を思い出させる作りで、とくにシャッターもまったく同じという偶然もあり、惹きつけられたの。
Q:過去に、影響を受けたファッションデザイナーやアーティストはいる?

マリアナ・コルテス:答えとしてはノーよ。もちろん、同じようにカラフルな配色の洋服ブランドはチェックするし、アートもよく見に行くけれど、Juana de Arcoのものづくりに影響されているかというと別の話。やっぱり、私を含むデザインチーム全員がクリエイターなので、日々、頭に浮かぶ色が違い、その時々の思いで作られるものだから。もちろん季節に合わせた色のパレットはあるけれど、どちらかというと日々のインスピレーション、日々感じる色がそのまま洋服に現れるの。一着の服作りには、ベースの色を決める人、柄を選ぶ人、柄の色を選ぶ人、縫う糸の色を選ぶ人など約20人のスタッフが関わり、それぞれがその時々の気分や思いで作っているので、私のデザインというよりデザインチームが作り上げているもの。20人の作業を経て戻ってくるので、時に、私自身が驚くほど予想外の仕上がりになることもあるけれど、それもありだと思うわ。全ての工程を、100%私がコントロールしないからこそ、Juana de Arcoに組み込まれているアートは無限大なのよ。