未来へのビジョンは掠れていき、足元すらぼやけてしまう。
ただ、夜中のラジオから聴こえる古い音楽に魂は揺れ、 老いたバレリーナのように自由を満たしてくれる。
このよろめきはいつまで続くのだろうか──
Maison MIHARA YASUHIRO のユーモアはシーズンを 追うごとに拡張し続けている。
混沌とした夜の世界によって今世を仄めかすコレクション。迷走する時代に 到来する光を待ち望む。
三原が脳裏に浮かべたのは、 兄から着古しを譲り受けていた体験とメランコリックな記憶。
そして、子どもに大人の服を着せたときに 生じる不完全さ。巨大な服が包括する得体の知れないよろめきに、「もうこれ以上大人が成長することはない」 と皮肉めいたメタファーを込めた。
本コレクションでは三原にとってインスピレーション源のひとつである夜の世界が生彩を放つ。
艶感のある エナメル地のフェイクレザー、燦然と輝くテープ糸のウィメンズニットなど煌びやかな新素材も登場し、 無秩序な夜のムードを昂らせる。