H.P.FRANCEバイヤーが行く 〜パリ&ロンドン買い付けレポート〜 世界的にポストコロナ時代に突入した2022年。ファッションウィークはリモートからリアルショーが復活し、海外との往来も戻りつつある中、H.P.FRANCEのバイヤーたちも、2023年の買い付けのために久しぶりのヨーロッパ出張へ。クリエイターとの再会や新ブランドの発掘など、3名のバイヤーに現地での出来事を取材しました。
Episode 1 goldie H.P.FRANCEバイヤー 髙橋 悠平 コロナ前から一層深まった関係性 自分にとっては、約3年ぶりとなったパリ出張。この数年で街や人がどれくらい様変わりしたのだろうと不安と期待をもって訪れましたが、クリエイターたちは変わらず温かく、再会を喜んでくれ、安心感がありました。むしろ、コロナ禍でオンラインのやりとりが増え、以前よりも相手を思いやる気持ちが増したことで、関係性が深まったと同時に絆も強まったように感じられました。この数年、皆が大変な思いをしましたが、結果的にはより良い形に変化したかもしれません。
彼らの故郷の風景にインスパイアされ、人工ラフィア素材を使用するなど爽やかなコレクションに仕上がった。Aprosio&Co(アプロジオアンドコー)のショールームでは、デザイナーのオルネラがアンティーク調のキャビネットに膨大なコレクションを並べ、空間そのものでブランドの世界を表現していました。いつもながら、彼女が手がけるディスプレイはとても美しい。膨大な種類のビーズと糸の色の、無限の組み合わせから、自身の感覚で作り出す色彩。そして、その組み合わせによって新たなストーリーが生まれます。
若干シャイな性格ですが、内面に秘めた陽気な温かさと、モノヘの愛に溢れた人だと改めて感じました。2023年春夏コレクションはオルネラのディスプレイを参考に、アイテムの並びを想定したラインナップで買い付けています。
相手に喜んでもらいたいという、心温まるおもてなしの気持ちに溢れたサム。その想いは、貴重なアンティークパーツを惜しみなく使用する彼女の作品にも表れていると、会う度に思います。2023年は、The Magpie & The Wardrobeのアイテムが受注会でのオーダーではなく、いくつかのgoldie H.P.FRANCE店舗に常設で並ぶ予定ですので、どうぞお楽しみに!
goldie H.P.FRANCE新ブランド速報! 今回パリの展示会で見つけた「RECO(レコ)」という余剰レザーを使用したバッグブランドを、早速2023年春夏シーズンより一部店舗にて展開。メゾンで働いた経歴を持つスペイン人デザイナーが、フランスを拠点に活動しており、コロナ禍に立ち上げた新しいブランドです。
レザー生地のデッドストックなど限られた素材を活用するため「パッチワーク」の手法をとっており、 独特なフォルムと質感が魅力。柔らかくて軽い機能性と、クラフトマンシップを兼ね備えた新ブランドを、どうぞお楽しみに!
Episode 2 H.P.FRANCE BIJOUXバイヤー 椎熊 祐美子 街と調和する、ロンドンのクリエイターとお店 H.P.FRANCE BIJOUXのバイヤーとして初めてのヨーロッパ出張は、各ブランドやクリエイターの世界観を体験できる本店が印象的でした。特にロンドンは、エリアによって街の雰囲気も異なり、それぞれの街と調和したお店は、どこも住みたくなるようなノスタルジックで居心地の良い場所でした。 まず最初は、Alex Monroe(アレックス・モンロー)を訪問。
今回はロンドンの二店舗のうち、中心地のフローラルストリート沿いにあるお店を訪れました。温もりを感じる木目調の店内は、まさにブランドの世界そのもの。壁にはデザイナー・アレックス自身が制作したオブジェもディスプレイされている。 到着時、ちょうどアレックスが私たちのために、お茶と合わせるマドレーヌを買って帰って来たところでした。相変わらず紳士的で穏やか、癒し系オーラが健在のアレックスですが、ビジネスに対しては真面目でいつも迅速に対応してくれ、彼の仕事に対する姿勢も勉強になっています。
店内はピンクベージュとくすんだブルーの落ち着いた配色で、観葉植物が多かったり、スピリチュアルな音楽が流れていたりと、どこかオリエンタルな空気を感じました。コンパクトな店内は、まるで別世界に足を踏み入れたよう。不思議な居心地の良さを覚える空間。 ロンドンの街並みは洗練されていながらも、どこか温かみや歴史が感じられ、古いものを大切に受け継ぐ文化の中で、クリエイターたちも独自の世界観を育んでいるようでした。 まるでイメージしていたブランドの世界観が、そのまま表現された空間を見て、お店を構えた場所を含め、クリエイターたちの一貫したこだわりとプロフェッショナリズムを感じました。 重厚感のあるパリ、redlineを訪問 出張後半はパリに移動。redline(レッドライン)の本店は、リヴォリ通りとオペラ通りの間という、まさにパリの一等地にあります。真っ白な外壁にブランドの赤色ロゴ、店内も白で統一されたシンプルなお店は、ゴージャスな街並みとのコントラストが印象的で、ひときわ目を引きました。
Episode 3 destination Tokyoバイヤー ヤン・ルゴエック 嬉しい再会も、まるで昨日のことのよう パリのショールームや展示会では、クリエイターたちと久々の再会を喜びました。2年間会っていなかったことが嘘のように、お互い全く変わっておらず、プライベートの近況報告で盛り上がりました。
新鋭オペラ歌手の歌声を堪能 さらに、今回のパリ出張で忘れられない夜となったのが、以前から気になっていたJakub Józef Orliński(ヤクブ・ユゼフ・オルリンスキ)という、若手のポーランド人オペラ歌手のパフォーマンスを見れたこと。偶然にも出張の日程と、彼のパリ訪問日が被っていたので、シャンゼリゼ通り近くの劇場で催されたコンサートに行ってきました。
舞台と客席の距離が近く、とても臨場感のある劇場で、彼の歌声を堪能しました。カジュアルなハーフパンツ姿で歌う動画をYouTubeで公開するなど、既存のオペラ歌手の概念を覆す風貌と活動が話題を呼んでいます。ぜひチェックしてみて下さい。 destination Tokyo新ブランド速報! 今回はコロナ禍で渡航が叶わなかった期間に、インスタグラムやWEBのリサーチで気になっていたブランドのショーや展示会も複数訪問しました。中でも印象的だったのは、「NAMESAKE(ネイムセイク)」という台湾人デザイナーが手がける日本未進出のブランド。バスケットボールにインスパイアされたストリートブランドで、パリの黒人コミュニティの間でも話題なんだそう。
新感覚のストリートラグジュアリーブランドは、destination Tokyoにとってまた新しい挑戦になります。2023年2月から随時展開予定ですので、お楽しみに。ショーの終わりには、バスケットボール選手が屋外のコートでパフォーマンス。 2023年春夏コレクションの印象を一言で言うと、もはやファッション業界に「トレンド」という概念が無くなったということ。約2年のコロナ禍に、デザイナーたちには自宅やアトリエなど各自で作業をする時間が生まれ、より各ブランドの独自性が強まったと感じさせられました。 コロナ以前は、多くのデザイナーたちが同じものに影響され、そこから様々なアプローチのデザインが生まれる様子が面白かったのですが、今は皆がそれぞれの方向性を突き進んでいて、また別の面白さがあると思いました。 文章:米田沙良(H.P.FRANCE THE MAGAZINE編集部) SHOP INFORMATION